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四万十川の源流、滑床渓谷から流れ出る清らかな水のほとりに、松野町・目黒(めぐろ)という集落があります。
この目黒の入口にある先祖代々の田んぼで、コシヒカリ「誉米(ほまれまい)」を育てているのが、フォレスト株式会社 代表の河野亮二(こうの りょうじ)さん。
収穫したお米を担ぐ、フォレスト株式会社 代表の河野亮二さん
松野町にUターンして6年。二人の師から受け継いだ知恵を大切にした、自分らしい米作りを続けています。
第2弾となる今回の記事では、河野さんに、目黒での米づくりと暮らし、そして「誉米」に込めた想いを伺いました。
【3行でわかる】この記事のポイント
米作りを始めたきっかけは二つあります。一つ目は、先祖代々受け継いだ農地で、自分が食べるお米は自分で作りたいと思ったこと。
二つ目は、長年我が家の田んぼでおいしいお米を作ってくださった「園部美國(そのべ みくに)さん」の栽培方法を学びたいと思ったことです。
農地の貸借契約が終わるまでの二年間、栽培技術だけでなく、農業に真摯に向き合う姿勢も教わりました。
契約終了後は、美國さんから一世代若い大規模農家の誉(ほまれ)さんを紹介していただき、また違った手法を学んでいます。
二人の先輩から受け継いだ知恵を大切にしながら、自分らしい米作りを目指しています。
小学生の時に、田植えや稲刈りをした我が家の田んぼで米作りができていることが何よりも嬉しいことです。
そして、目黒の圧倒的に綺麗で冷たい水は、美味しいお米を作る上で、何よりも強味になります。

紅葉の渓谷を流れる、冷たく澄んだ水
また、目黒の入口にある我が家の田んぼは、目黒の諸先輩方の目に留まり、いろいろな助言をもらえることにもありがたみを感じています。
米作りの期間中は、起床後から6時半まで田んぼで作業をします。毎朝、気温や水温を測り、水の管理と稲の生育状況を確認します。
記録をデータとして残す一方、実際に田んぼへ入り、稲だけでなく雑草や泥の状態も五感で確かめています。
その後、8時から17時まではフォレスト株式会社で勤務します。
フォレスト株式会社から見る、松野町の風景
帰宅後は再び田んぼを見回り、稲の生育に合わせて水深を調整します。
猛暑の日には水をかけ流すなど、その日の天候や田んぼの状態に応じた対応をしていますね。
農家の数が減っていく中で、規模の拡大、機械の大型化などが進んでいます。
一方で、無農薬無肥料などの自然農法を基本とする農業を目指す若者も増えています。
そして、まだまだ自分たちや親戚・友人が食べるお米を作る縁故米の文化は健在です。
いろいろな価値観が共存する中で、互いを認め合い、新しい米作りが始まっているように感じています。
ふるさとの目黒を離れ、今は帰る家もなくなった方が、ふるさと納税の返礼品に私の誉米を選んでくださいました。
私が直接知っている方ではありませんでしたが、知人を通じて「目黒のお米の味を思い出しました。ありがとうございます」というメッセージをいただき、心からうれしく思いました。

夕暮れの道を照らす、「目黒」の行灯
誉米が、故郷を離れた方と目黒をもう一度つなぐ接点になれたことに、米作りを続ける喜びと大きな意味を感じています。
松野町には、今も里山文化が残っています。
かつて里山では、「仕事」とは人や地域社会、自然との関係の中で自らの役割を担うことであり、「稼ぎ」とはお金という価値を得るための活動でした。
しかし現代では、多くの人が「仕事」と「稼ぎ」を同じものとして捉えるようになっています。
それでも松野町では、地域の祭りやお寺の行事を住民自らの手で支え、米づくりに欠かせない井出(用水路の給水口)の掃除も地域のみんなで行っています。

提灯の明かりの下、輪になって踊る夏祭りの盆踊り
こうした暮らしの中には、人と人、人と自然とのつながりから生まれる「仕事」が今も息づいています。
便利で効率が重視される時代だからこそ、お金だけでは測れない役割や支え合いの関係が残っていること。そして、その価値を大切にしながら現代に合わせて少しずつ新しい形へと育てていること。それこそが松野町の最も大きな魅力だと私は思います。
「美國」と「誉」。私に米作りを教えてくださったお二人の名前には、どちらもお米への深い愛情が表れているように感じています。その思いを受け継ぎたくて、「誉米」と名付けました。
お二人から学び、今も大切にしていることの一つが、あぜ道をきれいに保つことです。あぜ道の美しさがお米の味に直接影響するわけではありません。
しかし、きれいなあぜ道は、何度も田んぼへ足を運び、稲や水、土の状態を丁寧に見ている証しです。「米作りの現場を見て、現場から学べ」というお二人の教えを、これからも守り続けたいと思っています。
田植えの頃、山々を鏡のように映す田んぼ
我が家の田んぼは谷間にあり、日照時間が短く水も冷たいため、平地の農家さんと比べると収穫量は7〜8割ほどです。田んぼの形もいびつで面積が小さく、効率化が難しいため手間もかかります。
しかし、裏を返せば、圧倒的に綺麗な水と昼夜の寒暖差の中で稲がじっくり育ち、甘みとうまみを蓄えた、最高においしいお米を作れる場所でもあります。
霧に包まれた山里を流れる清流
その味を支えるため、特に力を入れているのが水の管理です。川から水を引く取水口は我が家専用なので、稲の生育や天候に合わせて、水を入れたり抜いたりしながら水深をきめ細かく調整しています。
松野町には素晴らしい農産物を作る農家の方々がいますが、ふるさと納税の返礼品に自分の顔を出すことをためらう方も多くいました。
そこで、まずは自分がファーストペンギンになろうと考え、誉米の出品を始めました。財政状況の厳しい松野町に少しでも貢献したいという思いもありました。
そして何より、こだわって育てたお米だからこそ、生産者の顔や米作りへの思いとともに、選んでくださった方へ直接届けたいと考えています。誉米を通じて新たなつながりが生まれることにも、大きな喜びと手応えを感じています。
誉米は、滑床渓谷から流れ込む冷たく澄んだ水を生かして育てています。
炊き上がったときの艶、噛むほどに広がる甘み、そしてかすかな香りを楽しんでいただきたいです。冷めてもおいしさが続くので、お弁当やおにぎりにもよく合います。

「炊き上がったときの艶、噛むほどに広がる甘みを楽しんでほしい」と河野さん
まずは炊きたてをそのまま味わい、目黒の水と自然が育んだ一粒一粒の味を感じていただけたらうれしいです。
おいしいお米を作ることに加え、環境に配慮した米作りにも挑戦したいと考えています。具体的には、フォレスト株式会社で製造される木質バイオマス(*1)を田んぼで活用し、土づくりや温室効果ガスの削減、J-クレジット制度(*2)にもつなげていきたいです。
*1 木質バイオマス:間伐材や製材時に出る端材など、木からつくられる資源のこと。
*2 J-クレジット制度:CO2などの排出削減量・吸収量を国が「クレジット」として認証し、企業などとの間で取引できるようにする国の制度。
ただ新しい技術を取り入れるだけでなく、美國さんや誉さんから学んだ、現場をよく見る姿勢も大切にします。
松野町の自然と田んぼを次の世代へ残し、農業と林業が支え合う、この地域ならではの持続可能な米作りを形にしていきたいと思っています。
松野町では、四季折々の里山の風景を見ていただきたいです。春の新緑、初夏の水を張った田んぼ、秋の黄金色に実った稲穂、冬の静かな山里には、それぞれ違った美しさがあります。
雪化粧した冬の滑床渓谷
なかでも目黒では、滑床渓谷から田んぼへ流れ込む、冷たく澄んだ水をぜひ見てほしいです。
目黒山形などの地域遺産や、神社・お寺の行事にも触れていただければ、人と自然が支え合う、松野町の里山文化を感じていただけると思います。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
「松野町、ちょっと気になる」。そう思っていただけたなら、それがもう、町への応援の第一歩です。
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